千ピース

30年以上も前の話。

娘の彼氏が交通事故で足に大けがをして入院した。見舞いに行くと、彼は足にギプスを巻かれていたが、いつもと同じように元気で明るく、ニューヨークの夜景のパズルに取り組んでいた。千ピースだと聞いて、驚いた。退院後、完成した作品をいただいたので部屋に飾った。

 

彼は、アルバイト先を100回ぐらい転々としたと聞いて、また、びっくり!

私も三日坊主なのだと言うと、「一番短いのは、焼き鳥屋のバイトで、午前中、肉を串にさしてたんですけど、昼休みに、バックレました」と。

 

数年後、娘は彼と結婚した。

組織は性に合わないからと起業した婿さんは、その後30年、大過なく今に至っている。娘によれば、彼は「超、細かい」と。

例えば、娘が、自分のクルマを使って、宅配の下請けのバイトをしようかなと言ったら、「配達先が多いから、一日に何十回も車を停めるし、再配達もある。停めるたびに、タイヤやブレーキが劣化する。車が入らない細い路地やエレベーターのないマンションがある。包装が下手で荷崩れしたり、雨の日に荷物がぬれたりして、クレームがつく。すべてを計算したら、マイナスになる」と。