謎解きが始まった

海辺の街への一時移転は、今住んでいる団地の排水管工事の間ホテルで過ごそうかという話からスタートした。

娘が、「近場のベイサイトがにぎやかだよ」と言い、わたしが、「短期のホテル暮らしではなく、もう少し延長して気分転換してみるかな」と、欲を出した。

重度の難聴の夫が夜中にラジオを大音量でかけるので、防音がしっかりしている建物という条件は欠かせない。

思いついたのが、長年住んできた団地と同じような棲家を探すということだった。

 

夫が移動を嫌がったり、娘が休日に犬を預けられなくなるということで長期滞在案をしぶったりしたが、私はなぜか、「絶対にやり遂げてみせる」と、意地になって探し、海辺の団地を借りることができた。

 

夫が、透析をしながら何度も心臓の手術に挑戦し、「親と同じくらい、90歳過ぎまで、後7年ぐらいは生きたい」というので、それなら私も長期戦に備えなければという気分になった。

心身の健康を保持しなければ、在宅介護はできない。

この辺で、気分転換をしてみよう。

 

それにしても、今の暮らしが快適なのに、なぜこんなにも移動してみたいのか?

 

留守に備えてかたずけをしていると、物が少ない暮らしをしてきたつもりなのに、3か所の押入れはびっしり詰まっている。

思い切って捨てることに決めた小物の多さに驚いている。

 

なるほど、身辺整理の時期が来ているのだなと、自分のあまりにもしつこい移動欲の謎が解け始めた。