最後に食べるもの

父は、93歳で亡くなる前、カボチャの煮物を食べた。

遠出が辛くなるまで魚の行商をしていて、魚は自分で調理して、朝昼晩食べていたが、寝込んでからはいらないと言った。

父は癇癪もちで気難しかった。ケガで入院した時も、「あの人もイヤ、この人もダメ」で、付き添いさんが毎日変わった。

「お父ちゃんが入院したら困るね」と、私たち三姉妹は心配していたのだが、在宅で一週間ほど寝込んだだけで、逝った。

母も、在宅で十日ほど寝込んだだけで、90歳で逝った。

最後に食べたのは、味噌汁かけご飯だった。

 

夫の母親は、電話で、「何にも入らんようになった。アメ舐めとるんよ」と言い、睡眠中に亡くなった。93歳だった。

隣の布団で寝ていた父親は、「呼ばれたような気がしたんやけどな、ねむとうて……朝、気が付いたんよ」と、寂しそうな顔で言った。

父親は、96歳で脳卒中で倒れ、入院して、昏睡状態のまま、二か月目に点滴を受けながら亡くなった。

 

夫は食欲旺盛で、好きな食べ物も沢山あるので、最後に何を食べるのか、予想もつかない。私は、食欲がない時でも、クリームパンはおいしいと思う。