キャラメル・パパ
早朝、ラジオで歌番組を聞いていたら、ある言葉が飛び込んで来た。
自分が大昔に書いた話のタイトルによく似た言葉だった。
私にとっては初耳で、完全にかぶっているわけではないし、私がパクったわけでもないから、冷汗をかくようなことではない。
偶然、似ているだけなのだが、驚いた。
なぜ驚いたかというと、大昔、『キャラメル・パパ』というタイトルの話を書いたことがあったからだ。
営業する力がないので、知人の事務所にドラマの原案を持ち込み、小遣い稼ぎをしていた。
亡き父は、時々、行商の帰りに箱入りのミルクキャラメルを買ってきてくれた。
そんな父をモデルにして書いた話だった。
その話は単独で使われたわけではなく、提案したいくつかの話を混ぜ、加工して、
短いシリーズものとして放映された。
タイトルも違う。
父は商才もなく、癇癪もちで、母とはいさかいが絶えなかったが、冷酷な男ではなかった。
魚と汗の臭いがする父は、情にもろく、血が熱い人だったような気がする。